SES編
2026年04月09日
① なぜSESでは「リーダー育成」がうまくいかないのか
SESの現場でリーダー育成が難しい理由、少し立ち止まって考えたことはあるでしょうか。
実は、多くの場合「上司が普段の仕事を見ていない」という構造そのものに原因があります。
通常の会社であれば、目標は上から降りてきて、上司が日々の仕事を見ながらフィードバ
ックします。
でもSESでは、エンジニアはお客様先で働き、実際の指示を出すのは常駐先
のリーダーです。
自社の上司はどうしても“間接的”にしか状況を把握できません。
その結果、「何を目標にすればいいのか」「どこまでできれば評価されるのか」が曖昧になりがちです。
さらに、任されるのはスキル見合いの業務が中心で、成長につながる目標設定も難しい。こうした状態では、従来の“管理型リーダー”は機能しません。
だからこそ必要なのは、「直接見られない前提」で人を育てるリーダーです。
業務を管理するのではなく、行動や思考の変化を支える存在。この発想の転換が、SESのリーダー育
成の出発点になります。
② SESのリーダーは「指示する人」ではなく「支える人」
SESのリーダーに求められる役割は、少しイメージを変える必要がありますプロジェクトを率いる人というより、「メンター」としての役割です。
エンジニアは現場で孤立しやすく、不安や迷いを抱えがちです。そんな中でリーダーができるのは、細かく指示を出すことではありません。
それよりも、「話を聴く」「問いかける」「気づかせる」ことのほうが、はるかに重要です。
たとえば、「もっと頑張れ」と言っても行動は変わりませんよね。
一方で、「次に何を一つ変えたら前に進めそう?」と問いかけると、本人の中で考えが動き始めます。
傾聴力や質問力、フィードバックの仕方は、一見地味ですが、実は人を育てるうえで非常に強力なスキルです。
SESのリーダーとは、答えを与える人ではなく、相手の中にある答えを引き出す人。
そんな関わり方が求められています。
③ 未経験エンジニアの「見えない不安」に寄り添う
未経験エンジニアと接していると、「なんとなく不安そうだな」と感じることはありませんか。
実は多くの人が、「自分に向いているのか分からない」「このままでいいのか分からない」という状態にあります。
ここでありがちなのが、「まずは勉強しよう」「資格を取ろう」といったアドバイスです。
ただ、それだけではなかなか続きません。なぜなら、そもそも目標の立て方や学び方そのものを知らないからです。
大切なのは、不安を消すことではなく、「不安があっても動ける状態」をつくることです。
そのためには、やるべきことを小さく分解し、「これならできる」というレベルまで落とし込むこと。
そして、小さな成功体験を積み重ねることです。
また、「この先どうなるのか」という見通しを伝えることも重要です。
IT業界の全体像やキャリアの選択肢が見えるだけで、人は安心して動けるようになります。
リーダーは、その“見えない未来”を言葉にしてあげる存在でもあるのです。
④ リーダー育成は「離職を防ぐための最重要施策」
SES企業にとって、リーダー育成は単なる教育ではありません。
実はこれ、「人材が辞めない会社をつくる施策」そのものです。
エンジニアが辞める理由は、必ずしも給与や待遇だけではありません。
「誰にも見てもらえていない」「成長している実感がない」「相談できる人がいない」——こうした感覚が積み重なったとき、人は静かに離れていきます。
だからこそ重要なのが、定期的な関わりです。
週報へのコメント、定期面談、ちょっとしたフィードバック。
こうした接点があるだけで、「ちゃんと見てもらえている」という安心感が生まれます。
さらに、話す中で自分の成長や課題が整理され、「次に何をすればいいか」が見えてくる。
これが積み重なると、エンジニアは前向きに仕事に取り組めるようになります。
リーダーが育ち、こうした関わりが当たり前になると、組織の空気は大きく変わります。
SESにおけるリーダー育成とは、実は“人が辞めない仕組みづくり”そのもの。
そう捉えると、その重要性がよりはっきり見えてきます。
⑤SESエンジニアの育成、目標達成支援にはなぜコーチング手法が有効なのか
SESエンジニアの育成や目標達成支援において、コーチング手法が有効なのは、その働き方の構造に理由があります。
SESでは、日々の業務は顧客先で行われ、実質的な上司も常駐先のリーダーであることが多く、自社の上司が直接業務を見たり、細かく指示を出したりすることが難しい環境にあります。
このため、「何をどこまでやれば評価されるのか」「自分は成長しているのか」といった基準が曖昧になりやすく、指示待ちや不安の増大につながりがちです。
こうした環境では、従来のようなティーチング(教える・指示する)中心の育成は機能しにくくなります。
なぜなら、日々の行動を直接管理できないため、外からコントロールするアプローチには限界があるからです。そこで有効になるのがコーチングです。
コーチングは、本人の内側にある考えや意思を引き出し、自ら行動を選択できる状態をつくる手法
です。
具体的には、「今どのような状況か」「どこを目指したいのか」「そのために次に何をするか」といった問いを通じて、目標と行動を自分の言葉で整理させます。
これにより、曖昧だった目標が具体化され、「やらされる仕事」から「自分で進める仕事」へと認識が変わります。
また、週次での振り返りや改善点の言語化を通じて、小さな成功体験を積み重ねることで、自己効力感も高まります。
さらにSES環境では、孤独感や将来への不安がパフォーマンスに大きく影響します。
コーチングは単なる目標管理ではなく、こうした心理的な状態にもアプローチし、「安心して挑戦できる土台」をつくる役割も果たします。
つまりコーチングとは、管理できない環境でも人が自律的に成長し続けるための仕組みで
す。SESという特殊な働き方においてこそ、その価値が最大限に発揮されるのです。